海陽町立図書館「デジタル・メディア・ラボ」は、アナログ情報を長い年月蓄積してきた図書館が、 未来に向かって、どのようにデジタル情報を取り扱っていくべきかを考える、実験室のようなデジタル空間です。 図書館が持っている、蔵書の書誌情報や、貸出・予約サービスなどの利用情報については、 デジタル「技術」を利用した管理システムが、どの図書館でも利用されています。 この実験室で考えていくのは、そのような「技術」のことではなく、デジタル「情報」のことです。 具体的には、電子書籍、デジタル絵本、インターネット上の情報、ゲームなどを含んだものですが、 名称に「メディア」という言葉を入れているとおり、そのようなデジタル情報を表示し操作するための、 スマートフォンやタブレット、テレビモニターやコントローラーまでをも、考察の対象としています。 なぜなら、図書館や日常の実際の使用においては、デジタル情報を表示し取り扱う端末が必須であり、 時折世間を騒がせるデジタル化の是非論争も、単に端末の問題と理解できることがあるからです。 我が国を挙げて教育DX(デジタル化)が推進される中、2023年に、IT教育先進国とされる北欧諸国の一部で、 学校での授業中に使用されていたタブレット端末やノートパソコンを、紙と鉛筆に戻すということが報道され、 さまざまな議論を呼んでいます。 このことは、デジタルとアナログには、それぞれの長所と短所があるということが実際の教育現場で分かってきた、 ということを表しています。 我が国においては、このことに関する知見がまだ充分に蓄積されていません。 デジタルとアナログの長所を組み合わせて大きな力を発揮するために、 それぞれの長所と短所を注意深く観察して判断していく必要があります。 図書館は、情報を蓄積させる、知識の宝庫です。これは、アナログもデジタルも、両方含んだものでないと、 人類の知識のうちに大きな取り残しを生じてしまうことになります。 図書館に蓄積された情報を用いて、テジタル化が推進されている教育現場や社会に、 デジタルとアナログを組み合わせる方法のモデルを提示していくことができる場であると信じています。 海陽町立図書館は、決して大きな図書館であるとは言えません。 ですが、無限に広がるデジタル空間と、そのデジタル空間を現実に反映した海南図書館・宍喰図書館の小さな一室とともに、 世界のみなさまと知識を共有してまいれますことを深く願っております。
令和7年3月7日
海陽町立図書館長
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