○海陽町職員分限処分指針

令和5年3月28日

訓令第2号

第1 分限処分の趣旨

地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「法」という。)に定める分限処分は、全体の奉仕者として公正に職務を遂行できる環境を確保するための身分保障を前提に、職員に必要な適格性の欠如等が認められる職員が存在して、公務能率の維持や確保ができなくなるおそれのある場合において、公務の適正かつ能率的な運営を図るために当該職員を免職、降任等させるものである。

公務の能率的な運営に支障を生じさせる職員の勤務実績やその態度が何ら改善することのない場合に放置することは、他の職員に過度の負担を生じさせることにもなる。

さらに、町民が職員を見る目も厳しくなっており、町民に対する説明責任も果たせない状況は回避しなければならない。

この指針は、分限事由(法第28条第2項の休職を除く。以下同じ。)に該当するか、又は可能性のある職員に対して、次に掲げる事項のための対応措置を定めることを目的とする。

(1) 公務能率を阻害させている職員にその改善を求めること。

(2) 改善が見込めない場合は、厳正に分限処分を行うこと。

(3) 恣意的な処分とならないよう、適切かつ合理的な判断を行うこと。

また、分限事由である勤務実績不良(法第28条第1項第1号)又は適格性欠如(同項第3号)の徴表と評価することができる事実の例(参考1)、それらを判断する客観的な資料の例(参考3)及び国において実際に分限処分が行われた例(参考2)を示し、参考に供することとする。

なお、希望降任については、この指針によらず別に定めるところによる。

第2 所属長の責務

所属長は、円滑な職場運営並びに効率的な事務執行の実現と所属職員の指導及び育成に努めるとともに、職員の健康状態も含め、現況について的確に把握するよう努めなければならない。

このことから所属長は、この指針の適用に当たり、次のことに責任と義務を負うこととし、これらのことが遵守できない場合、所属長は管理監督責任を問われることがある。

(1) 所属職員が「勤務実績不良」又は「適格性欠如」に該当するおそれがある場合、徹底して注意及び指導を行い、指導内容を記録しておくこと。

(2) 所属職員が「勤務実績不良」又は「適格性欠如」に該当すると思われる場合、速やかに総務課に報告すること。

第3 分限事由と処分内容

職員が、所定の手続を経てもなお、次の分限事由に該当すると判断された場合は、それぞれに定める処分を行う。

(1) 勤務実績不良(法第28条第1項第1号関係) 免職又は降任

職員が担当すべきものとして割り当てられた職務内容を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわらず、その実績が上がらない場合をいい、当該職員の出勤状況や勤務状況が不良な場合もこれに当たる。

(2) 心身の故障(法第28条第1項第2号関係) 免職又は降任

将来回復の可能性のない、又は病気休職期間中には回復の見込みが乏しい長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

(3) 適格性欠如(法第28条第1項第3号関係) 免職又は降任

職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合

(4) 受診命令違反(法第28条第1項第3号関係) 免職

病気休職期間の終了又は心身の故障と思われる理由による勤務実績不良若しくは適格性欠如の疑いについて、医師への受診命令に従わない場合

(5) 行方不明(法第28条第1項第3号関係) 免職

1月以上にわたる行方不明の場合

第4 分限事由に該当する可能性がある場合の対応

(1) 勤務実績不良及び適格性欠如

・問題行動等が認められる職員に対する措置等

第1段階 所属長は、所属職員に勤務実績不良又は適格性欠如に該当する徴表(以下「問題行動等」という。)が認められるときは、当該職員に対して繰り返し注意及び指導をし、その改善又は是正を求めるとともに、必要に応じて、当該職員の担当する業務の見直しを行うものとする。

第2段階 所属長は、前段階に規定する措置をしたにもかかわらず、当該職員に問題行動等の改善又は是正が認められないときは、当該職員に係る勤務状況記録報告書(様式第1号)を作成し、総務課長に提出するものとする。

第3段階 総務課長は、前段階の規定による勤務状況記録報告書の提出があったときは、当該職員に対して注意及び指導をするとともに、当該職員の配置換の実施又はその要否について検討するものとする。

第4段階 総務課長は、前段階に規定する措置をしたにもかかわらず、当該職員に問題行動等の改善又は是正が認められないときは、第2段階の規定により提出された勤務状況記録報告書に所管参事の意見を付し、副町長に提出するものとする。

勤務実績不良又は適格性欠如の可能性のある職員に、上記の措置等を行った上で、なお、改善されないときは、引き続き、次の手続を行った上で、法に定める「勤務実績不良」又は「適格性欠如」に該当するとされた場合、免職又は降任とする。

① 勤務実績不良又は適格性欠如の可能性がある職員には、総務課において所属長立会いの下、事情聴取を行い、問題行動等の内容を確認し、是正させるための注意又は指導を行う。(心身の故障の疑い→「(2)心身の故障及び受診命令違反」の手続へ)

② 事情聴取の結果、職員に指導が必要であると判断した場合、総務課長は「対象職員」に指定し通知する。(様式第2号)

③ 「対象職員」には、次のとおり改善研修を実施する。

ア ・本人→「改善目標」の設定(様式第3号)

・所属長→「対象職員」の勤務状況記録の作成(様式第4号)

勤務状況記録に基づき、適宜、所属長及び総務課による個別指導を行う。

イ 所属長は、対象職員の問題行動等が6か月の記録期間終了後、改善されたときは個別指導記録評価報告書(様式第5号)を、改善されないとき、又は改善が不十分なときは勤務実績不良等職員報告書(様式第6号)を総務課長に提出し、問題点が改善されたかを協議する。

・改善された→「対象職員」の指定の解除(様式第7号)

・改善されない→分限処分を行う可能性のある警告書(様式第8号)の交付

ウ 警告書の交付を受けた職員には、書面による弁明の機会を与える。

エ 警告書の交付日以後3か月、引き続き勤務状況記録を作成する。

④ 海陽町職員分限等審査委員会において審査する。

・改善された→「対象職員」の指定の解除

・改善がみられた→記録期間の延長(3か月) 上記③のエへ

・現在の職位として不適格だが、下位の職位であれば職務遂行が可能

→降任

・現在の職位として不適格であり、下位の職位でも職務遂行が困難→免職

・公務員として職務遂行が困難→免職

(2) 心身の故障及び受診命令違反

心身の故障に該当する可能性がある場合には、次の手続をし、医師に受診をさせて、法に定める「心身の故障」に該当するかを判断し、該当するときは免職又は降任とする。

① 産業医と他の医師1人に受診させる。[注1]

・医師2人が長期の療養が必要と診断→病気休暇又は休職[注2]

・受診命令違反[注3]

(ア) 事情聴取の結果や日常の勤務態度から、問題行動等の原因に心身の故障の疑いがある(以前から病歴・病気休暇歴がある等)職員に対し、所属長は口頭で受診を勧奨し、再三勧奨しても受診しない(おおむね2週間程度)場合は、受診勧告(様式第9号)を行う。

(イ) 受診勧告から2週間経過しても受診しない職員がいる場合、所属長は総務課に報告する。町長は受診命令書(様式第10号)を交付し、産業医と他の医師1人に受診させる。

・3か月以内に受診しなかった。→免職

② 管理職が、休職処分となり、3か月以上経過した場合については、復職に当たって海陽町職員分限等審査委員会において審査する。

・事務執行上、特に重大な支障が生じる→降任

③ 次に規定する事項に該当するときは、受診命令書(様式第11号)を交付し、主治医と他の専門医1人に受診させる。

ア 心身の故障による休職の期間が3年に達しようとしている。

イ 心身の故障による休職期間中であるが、今後職務遂行の見込みがない。

・職務遂行が可能な状態まで回復→復職

・職務遂行が困難と考えられる→海陽町職員分限等審査委員会へ

・受診命令違反[注3]

受診命令書を交付されても、命令に従わず、3か月以内に受診しなかった。

→免職

④ 海陽町職員分限等審査委員会において審査する。

・今後職務遂行の見込みがある→通算すべき休職期間の3年を限度として延長

・今後職務遂行の見込みがない→免職

この場合において、病気による休職から復職後、1年以内に再度の病気により休職(心身故障の内容が明らかに異なる場合を除く。)となり、休職期間が通算して3年に至るにもかかわらず、病状が回復せず、今後も職務の遂行に支障があると見込まれる場合は、免職とする。

また、病気休暇を取得した者又は休職処分となった者が、傷病が回復し職務に復帰した後1年を経過しない間に職務復帰日前の傷病と同一と認められる傷病により療養を必要とする場合は、再発とみなして職務に復帰した日前の病気休暇期間又は休職期間にその療養期間を通算する。

[注1]事情聴取の結果、心身の故障に疑いがあって受診し、医師2人の一方が療養不要と診断した場合は、勤務実績不良又は適格性欠如の手続を適用する。

[注2]休職処分を行う場合の期間は、医師2人の診断する期間の短い方に合わせることとする。

[注3]医師の受診を命じたにもかかわらずこれに従わない場合には、法に定める「適格性欠如」により免職とする。

(3) 行方不明

原則として職員が行方不明の場合は次の手続をし、1か月を経過すれば法に定める「適格性欠如」により免職とする。

ただし、行方不明となった原因が事故、災害等、本人の責任でないことが明らかである場合は、この限りでない。

① 所属長は、職員の行方不明の事実が判明した場合は、速やかに総務課長に報告する。

② 総務課は、上記の報告を受けた場合は、当該職員の家族から事情聴取を行うなど、その捜索の状況把握に努める。

③ 行方不明の事実が判明した日から1か月が経過してもその所在が不明かつその原因が事故、災害等によらないことが明らかな場合は、当該職員の職場への復帰が見込まれないものと判断し、免職とする。

④ 被処分者となる職員の所在を知ることができないときには、海陽町公告式条例(平成18年海陽町条例第3号)に規定する掲示場に、処分内容を掲出する。

第5 海陽町職員分限等審査委員会

① 対象職員に対する降任及び免職並びにその他の措置の取扱いに関し必要な事項を調査及び審議するため、海陽町職員分限等審査委員会(以下「委員会」という。)を置く。

② 委員会の組織及び運営に関する事項については、海陽町職員分限等審査委員会設置要綱の定めるところによる。

第6 指導対象職員の特例

委員会によって「対象職員」の指定を解除された者が、再び「対象職員」に指定されたときは、指定後速やかに委員会に付議することとする。

(施行期日)

1 この指針は、令和5年4月1日から施行する。

(経過措置)

2 この指針の施行の日(以下「施行日」という。)の前日までに所属長が作成した所属職員の言動等を記録した書類は、この指針の規定に基づく勤務状況記録とみなす。

3 施行日の前日までに、海陽町職員の分限に関する手続及び効果に関する条例(平成18年海陽町条例第26号)の規定によりなされた行為は、この指針の相当規定によりなされたものとみなし、休職の期間は通算する。

参考1 勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる事実の例

勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる事実の例としては、国家公務員においては、以下のようなものがある(表右側の「実例」は参考2の例と対応している。)。

なお、個々の例が法第28条第1項第1号の勤務実績不良又は同条同項第3号の適格性欠如のいずれの徴表に該当するかについては、諸般の要素を総合的に検討して判断する必要があるが、下記の例のうち、(1)から(5)までについては同条同項第1号又は第3号の徴表、(6)及び(7)については同条同項第3号の徴表と評価することができる。

また、個々の例の中には、同時に懲戒処分の対象となる事実も含まれていることから、当該事実を把握した任命権者は、分限処分と懲戒処分の目的や性格に照らして、どの処分を行うかを判断する必要がある。

勤務実績不良又は適格性欠如の徴表と評価することができる事実の例

事実の例

実例

(1) 勤務を欠くことにより職務を遂行しなかった。





① 長期にわたり又は繰り返し勤務を欠いたり、勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた。




連絡なしに出勤しなかったり、遅刻・早退をした。

事前に年次休暇等を申請せずに欠勤を繰り返し、業務に著しい支障を及ぼした(現実に連絡できない状況にあった場合を除く。)

② 業務と関係ない用事で度々無断で長時間席を離れるなど職務に専念しなかった(欠勤処理されていない場合でも勤務実績不良等と評価され得る。)




勤務時間中、頻繁に無断で自席を離れ、他の職員に著しい支障を及ぼした(緊急の場合を除く。)

業務に関係しない電話、電子メール又はインターネットに興じるなどして職務に専念しなかった(緊急の場合を除く。)

(2) 割り当てられた特定の業務を行わなかった。





所属する係の所掌業務のうち、自分の好む業務のみを行い、他の命ぜられた業務を行わなかった。


(3) 不完全な業務処理により職務遂行の実績があがらなかった。





① 業務のレベルや作業能率が著しく低かった。





業務の成果物が著しく拙劣であった。

事務処理数が職員の一般的な水準に比べ著しく劣った。

② 業務ミスを繰り返し、業務に支障を及ぼした。





計算業務を行うに当たって初歩的な計算誤りを繰り返した。


③ 業務を1人では完結できなかった。





他の職員と比べて窓口対応等でのトラブルが著しく多く、他の職員が処理せざるを得なかった。

④ 所定の業務処理を行わなかった。





上司への業務報告を怠った。

書類の提出期限を守らなかった。

業務日誌を作成しなかった。

(4) 業務上必要なファイルや書類を許可なく廃棄するなど意図的な業務妨害を行った。


(5) 職務命令に違反したり、職務命令を拒否した(受診命令の拒否を含む。)

エオ

(6) 上司等に対する暴力、暴言、誹謗中傷を繰り返した。

ウエカキ

(7) 協調性に欠け、他の職員と度々トラブルを起こした。

ウエオカキ

参考2 実際に分限処分が行われた例

(ア) 正規の手順に従って業務を処理せず、来訪者の照会に対しても必要なことを答えないなど、業務遂行に当たって常に同僚職員が応援する必要が生じ、再三の指示、指導にもかかわらず勤務実績の改善が見られず、かつ、遅刻、早退、終日欠勤などで無断欠勤を繰り返した。

(イ) 来訪者への対応につき責任をもって行う立場にある者が、勤務時間のほとんどを図書室において個人的な研究や勉強などで時間を過ごし、緊急時を含め、来訪者への対応態度に消極性が顕著で、来訪者や同僚の信頼を得ず、組織協働的な業務運営を困難にした。

(ウ) 上司・同僚・来訪者に対して、大声でその名誉・信用・人格を傷つけるような非難・中傷等を繰り返し、また、インターネットによりこれらの者を誹謗・中傷する内容の投稿をし、職員本人の業務が停滞しているだけでなく同僚職員の業務遂行にまで悪影響を及ぼした。

(エ) 暴力を伴う言動及び意味不明な言動、職務命令の拒否、部内部外の者に対する長時間の迷惑電話、職員の業務を長時間にわたり中断させる行為などを繰り返し行い、周囲の職員、特に女性職員に対し恐怖感を与え続けた。

(オ) 勤務状況について上司から度重なる注意、指導を受けるとともに、懲戒処分(減給)を受けたにもかかわらず、その後も勤務意欲に欠け、遅刻等について指導した上司に対する不適切な言動のほか、出勤後、庁舎の物置等に入り、職務命令を放棄したこともあった。また、事務室において管理者に長時間まとわりつき、管理者及び他の職員の業務の正常な遂行を妨害した。

(カ) 課長から命ぜられた課の日常の業務及び特命の業務を行わず、課の内外を問わず大声で叫びあるいは暴言を吐くなどけん騒にわたる言動を繰り返して業務の妨害を行い、勤務時間内に職場を離脱するなどして役所やその関係団体の幹部職員のもとに赴いて執ように面会を求め、更にこれら職員の自宅を夜間や休日に訪問して執ように面会を求めるなどの行為を繰り返した。

(キ) 繰り返し懲戒処分等に付され、上司から注意、指導、訓戒を受ける等厳重に戒められていたにもかかわらず、数年間にわたって、勤務時間中の飲食、雑談などや遅刻によって勤務を欠き、また、ラジオを聞きながら作業を行う、上司等に暴行を加え暴言を浴びせる、故意に作業を遅くするなどの行為を繰り返し行った。

参考3 勤務実績不良又は適格性欠如を証明するための客観的な資料の例

(1) 勤務評定記録書その他職員の勤務実績を判断するに足ると認められる事実を記録した文書

(2) 勤務実績が他の職員と比較して明らかに劣る事実を示す記録

(3) 仕事上の失敗・トラブル、苦情等の記録

(4) 指導に関する記録、対話に関する記録

○ 職務命令に従わない等、その職にふさわしくない言動に関する記録

○ その職に必要な能力、適性、知識を有していない事実に関する記録

(5) 服務に関する記録(懲戒処分、分限処分等の記録を含む。)

(6) 身上申告書、職務状況に関する報告

(7) 研修、業務の割振り変更や他の職への配置換の結果報告

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海陽町職員分限処分指針

令和5年3月28日 訓令第2号

(令和5年4月1日施行)